映画ブリグズビー・ベアについて

まず、映画「ブリグズビー・ベア」に関しての基本情報は以下の通り

製作国:アメリカ合衆国
公開:2017年7月(US) 2018年6月(JP)
監督:デイヴ・マッカリー
原案:カイル・ムーニー
脚本:ケヴィン・コステロ

出演:カイル・ムーニー・クレア・デインズ・マーク・ハミル・グレッグ・キニア・アンディ・サムバーグ

この作品は日本では昨年の6月に公開されて、一部話題になっており予め知り得た情報を見る限り私の好みの映画出ることは想像できていた作品だった。
しかし、結局劇場では観ずじまいの作品だった。そして先日自宅でようやく観たがいやはやこれは、まだ1回観ただけ、しかも観たのが昨日なのでまだ記憶が生々しすぎる部分があるが、端的に言ってこの映画は傑作だった。

この映画の内容を要約すると、幼児の頃に誘拐され、世界は風変わりな終末的世界だと教えられて25歳まで育ってしまった男が25歳で警察に救出されるところからこの映画は始まる。
主人公はこの誘拐されていた男なのだが、誘拐されている間、主人公は「ブリグズビー・ベア」というきぐるみのクマが主人公のSF教育番組だけを娯楽として与えられて生きてきた。
そのため主人公は、この「ブリグズビー・ベア」の非常にコアなオタクに育っており、誘拐されていた間の人生の全てがこの「ブリグズビー・ベア」を観ているか、「ブリグズビー・ベア」について考えているかだった。
しかし、主人公は「救出」されてしまった。本当の家族のもとに戻って彼は本当の母親に聞く「それでブリグズビー・ベアの新しいテープは届いているの?」と。
しかし「ブリグズビー・ベア」は主人公の偽りの父が誘拐した子供に風変わりな終末世界に疑問を持たないよう「教育」するために個人で製作したビデオであることがわかる。
主人公は愕然とし、また絶望する。

しかし、本当の父に連れて行かれた映画を観て非常に感銘を受けた主人公は、現実では誰が映画のような「物語」を作っても良い。ということを知る。地下の生活の中では「ブリグズビー・ベア」が唯一の物語だった。それだけにそれは「絶対」だった。
しかし外の世界では、誰が「物語」を作っても良いのだ。
彼はこれまでの人生のすべてを費やした「ブリグズビー・ベア」の研究の成果をもとに自分自身の「ブリグズビー・ベア」を作ることを夢見るようになる。

という内容である。

まず原案、脚本、監督のデイヴ・マッカリー・カイル・ムーニー・ケヴィン・コステロの3人はサタデー・ナイト・ライブのクルーであり、中学からの同級生だそうだ。
サタデーナイトライブの関係者が関わる映画としては古くはブルース・ブラザーズやウェインズ・ワールド等があるが、最近ではウィル・フェレル等の「俺たち」シリーズ等コメディ映画は多々ある。

ただし、この映画は現役のサタデー・ナイト・ライブの現役のクルーが自主的に製作した映画というもので、ジャンル分けすればコメディとも言えるが、日本ではあまりないジャンルのトラジコメディ(悲喜劇)と言われるジャンルの映画だと私は感じた。
しかし、普段コントを死ぬほど作っている人たちの映画なだけに私がこの映画で優れている点はキャラクターの造形で、この話はある種神話的な構造の普遍性を持っている。
ただ、「誘拐」がモチーフになっているため、社会的なメッセージのようなものを受け取ってしまうと、腑に落ちない話として受け止められてしまうかもしれないし、そのような感想もネットを見る限りは結構あるようだ。

私が感じたのは特に主人公であるジェームスのキャラクターがかなりコント的なキャラクターで、このキャラクターは2004年のアメリカ映画の「ナポレオン・ダイナマイト」の影響があるというか、ほぼナポレオンのキャラクターをトレースしているようなキャラクターだ。
脇役のキャラクターたちもほとんど記号的とも言えるわかりやすいキャラクターたちだ。
つまりこの話は寓話なのだ。

製作者が主人公を誘拐した夫婦の夫に「スター・ウォーズ」という神話の登場人物であるマーク・ハミルをキャスティングしたのも、そういった意図があったのではないかと私は考えた。
また、私がこの映画に感じたものとしては創作や表現の根源にあるものが正しくないものであったとしても、表現そのものの切実さによってその正しくなさを乗り越えることができる。
もしくは本物のまがい物が人の心を打つこともあるのだと言うこと。
ということだった。

とにかく主人公ジェームスにとって「ブリグズビー・ベア」の続きを作ることの切実さを表現しきれているのがすごいことだ。

また、この映画は映画についての映画というジャンルの映画でもある。
主人公がブリグズビー・ベアを作らなくてはならなかった切実さはこの映画の製作者たちの切実さでもある。

私はこれほどの切実さで表現をしているのだろうか?
なにか創作活動を行っている人はこの映画を観ると自分自身にそういった問が思い浮かんでしまうと思う。

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