白黒映画について考えた

今日、モノトーンの表現について考えることがあった。

20代や30代の比較的若い普段よく映画を見るという人複数と話していて、
「古い白黒映画は観ますか?」と聴くと「観ない」もしくは「見ることに抵抗がある」と答えが帰ってくるケースは多い。
当然、映画は現在性の強いコンテンツであるため、基本的には新しいものほど多くの人に見られるべきではあると思う。
しかし、ある年代以下の映画ファンと自認する人であっても白黒映画を「今」積極的には観ない。となってしまうのはなぜだろうか?
と少し考えてしまった。

また、美術、特に絵画の領域において、「若い作家が古色然とした色使いに拘泥するのは理解できない」という意味合いの意見をネット等で見ることがある。
(※これは単に渋い色使いに対しての否定的な考え方だけではなく、主に美術大学の日本画の教育における思想の色彩に関する傾向に対しての批評的な意見である場合もある。)
これには、私は同意できる部分と、果たして色彩だけで批評できる問題だろうか?と思う部分がある。

私自身は、20代の中盤くらいから絵画の制作においては墨を使った表現に取り組み始め、現在に至るまで制作する作品の多くはモノトーンに近い物が多い。
ただし、現在はモノトーンのくり返しからの脱却欲求から、取り組み方を変えつつあるが、あまりうまくいっていない状況である。

創作活動しているとたまに他人から〇〇らしさを求められてしまうことに辟易としていしまうことが多くある。
上記した若者らしさみたいなものも、若い時に「若者らしくない」と言われても本人にとって多くは「大きなお世話」でしかないように思う。

しかし、私の場合は22歳の時に小学校低学年くらいの子供からナチュラルに「おじさん」と言われたことがショックでその日のうちに髪の毛を金髪にしたことがある。
その時私にとって若さとは金髪だった。
正真正銘のおじさんとなった今、そのことを思い返してもその時私はただ金髪の22歳のおじさんになっただけだったと思う。
かなしい。

日本の美術大学における主に日本画などで見られる教育制度の傾向や、美術史上の問題を論ずるのはこの記事の本意ではないため書かない。
私自身は教育によって、必要以上に個人のクリエイティビティの発露に制限をかけた結果、制作をしている本人という当事者性の希薄な表現が身についてしまうことは不幸なことだと思う。
私自身にもそれは大なり小なり起こっっていることだと自覚している。

話を白黒映画に戻せば「古い白黒映画」は映画鑑賞においてはやはり「古典」であると言える。
そのため、映画を娯楽のためのコンテンツとして考えた場合にはやはり、食指が動きにくいものであることは否定できない。
また、今の20代からすればたとえ90年代であってもすでにそれはそれなりの「昔」である。
1950年代とかならまだしも1920年代や1930年代等はもう江戸時代と大差のないおおざっぱな意味での「昔」になってしまう。
そうなるととっつきにくさは遥か山のごとしとなってしまうのということになってしまうのは仕方がないだろうとは理解している。

しかし、白黒映画にしかない魅力は確かにあると私は感じている。
先日ブログの記事にも書いた「狩人の夜」のように、現在でも十分に楽しめるし、驚くほど素晴らしい古い白黒映画はたくさんある。
また、1990年代以降ごく最近(私にとっては)でも白黒で撮られた魅力的な作品は存在する上に、「ローガン」や「マッドマックス 怒りのデス・ロード」のように公式に白黒のバージョンが存在する最近作も存在する。

いくつかピックアップして記事を終わろうと思う。

「カリガリ博士」1920年言わずとしれたドイツ表現主義の金字塔

「アッシャー家の末裔」1928年 アメリカ文学であるポーの短編をポーランド系フランス人のジャン・エプシュタインが製作した実験的作品

「赤ちゃん教育」1938年 ハワード・ホークスのスクリューボール・コメディーの代表作

「拳銃の報酬」1959年 ハリー・ベラフォンテ主演のえげつないフィルムノワール、OPクレジットがめちゃくちゃかっこいい

「袋小路」1966年 ロマン・ポランスキーの作品、映像がとにかく凄まじい

 

比較的最近の映画も、

「ありふれた事件」1992年 映画におけるバイオレンス表現のポストモダン化を考える時にこの作品は非常に重要だと思う。
ショッキングなものを観る覚悟がない場合は視聴をおすすめしない。

「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」2013年 アレクサンダー・ペインの傑作だと私は考えている。アメリカンニューシネマへの追憶と、リスペクトに満ちた鎮魂歌

「フランシス・ハ」2014年 今年「レディ・バード」で注目されたグレタ・ガーウィグがノア・バームバックと組んだ作品、

当然上記の映画以外にも、比較的近年の映画でも「ベルリン天使の詩」や「エレファントマン」「イレイザーヘッド」などのリンチの作品など枚挙に暇はない。
古い作品もしかりである。
現在ではかなりの高画質で観られる古い作品も多い。

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